大切なこと伝えるために

accordina

アコーディナという楽器



初期のアコーディナ

アコーディナは1943年にBorel というメーカーが制作を開始しました。制作者はPaul Beuscher、楽器にもこの人の名前が刻印されています。当時のアコーディオンメーカーは楽器に制作者の名前をつけるのが慣例だったのでしょうかね。ホーナーのMORINO、GOLAもそうですね。ただ、現在ではこのアコーディナに関してはBorelのメーカーの名称で呼ばれています。

実際に最初のモデルが発売開始されるのは、着想してから11年後の1954年でした。Borelのアコーディナは前期型と後期型に別れます。前期型はリードに真鍮が使われて、後期型はスチール製になります。また、吹き口の形状も前期型と後期型では違います。また、前期型の音域は:D4 – A6ですが、後期型は:F4 – C7と3音高くなっています。これはおそらく、低音リードの音が出しにくく、作るのに手間がかかるためと思われます。早い話がコストダウンですね。

その後、Borel以外のアコーディオンメーカー数社も製造を開始します。マイナーチェンジを続けながら製造されるのですが、1970年半ばに製造を中止し市場からその姿を消します。

アコーディナの復刻

アコーディナ製造終了後も、一部の演奏家の間でこの楽器は使い続けられました。フランスのアコーディオン奏者、リシャール・ガリアーノもこの楽器の愛好者で、演奏会やレコーディングで頻繁に使用しました。

アコーディナは当初、オークションや楽器店で中古の出物を探して手に入れるしか方法がありませんでした。そんな中でフランスの楽器職人がこの楽器の復刻を試みます。現在、フランスでは数名の職人がアコーディナを作っています。しかし、中には楽器としての完成度に問題がある物もあります。

現在、日本で入手できて、完成度の良いアコーディナを紹介します。最新のアコーディナでProの演奏家が使用しているのも、この二機種がほとんどです。名古屋のモンテ・アコーディオンさんで購入することができます。国内で再調整されていますので、安心して使うことができます。

Marcel Druex

現在、数種類のデザインの物が存在しますが、代表的な物は左右透かし模様の入ったアコーディナです。特徴としてはとにかく良く鳴ります。管楽器並みに大きな音が出せます。30人くらいのハコならマイクはいらないくらいです。両サイドを透かし模様にしていて音の出口が広いので、肺活量のある人が演奏するとビックリするくらい大きな音が出ます。

リードを接着剤やビスねじを使わずにロウだけで固定させているのも、このモデルの特徴ですね。新しく開発されたモデルなので、内部構造の完成度はBorelよりも高いと思います。

Joseph Carrel

デザインは初期のBorelをかなり意識していますね。実用重視の割り切ったデザインもすがすがしいですね。作りとか完成度はわかりませんが、WEBだけで音を聞いた感じでは、ダークな感じでありながらも甘すぎない音色、これも初期のBorelを意識した音のようですね。YouTubeで検索してもこのモデルを使っている人、結構いますね。

このアコーディナの本体、木の部分の塗り仕上げはニスでなく「松ヤニ」を使用しているとのことです。音がよりダークになるために、ひと工夫してあるということですね。

鍵盤ハーモニカとの違い

アコーディナと鍵盤ハーモニカ、どう違うの?と思われる方もいるかもしれません。

結論から先に言うと、音の傾向だけならそんなに違わないです。厳密に言うと確かに違うのですが、それは同じ鍵ハモでもメーカーやモデル、グレードによって音は違いますし、アコーディナでもそれぞれ音は違います。でも一般的なくくりでは、同じ傾向の音といっていいでしょう。

ただアコーディナには特有の倍音の深さがあって、独自の「ひずみ」みたいなのがあります。ギターでオーバードライブをを軽くかけたような感じといえばわかってもらえるでしょうか。これも同じアコーディナであっても年代によって様々です。反対に鍵ハモの場合は一定のクオリティで同じ音が鳴ります。そして音はクリアーです。

過去には、アコーディナのボタンを「鍵盤」に置き換えて制作された「クラビエッタ」という楽器もありました。鍵ハモの元祖ともいわれています。実は鍵ハモも元々はアコーディナから生まれたんですね。

しかし、現在のアコーディナと鍵盤ハーモニカ、「楽器としての立ち位置」は全く違います。そこらあたりを書いていくことにします。

奏法の違い

アコーディナはボタン、鍵盤ハーモニカは鍵盤。見た目は単純明快です。しかしそれによって奏法が変わってきます。

アコーディナはボタン配列を活かして、小さなボディに三オクターブ半という広範囲の音域をカバーできます。その形状から演奏スタイルも奏者によってそれほど変わりません。

鍵盤ハーモニカは広範囲の音域をカバーするためには、アコーディナよりも大型となります。しかし大きくなった分、膝の上に乗せて(あるいは立てかけて)ハンディ・キーボードのように両手で演奏できます。両手を使った多彩な演奏法はアコーディナでは難しいです。奏者によっては、まるでリードオルガンのように演奏している人もいます。長いマウスピースとその形状を利用した奏法がたくさん見られます。

鍵盤ハーモニカは奏者によって多彩な演奏法があります。

補足:Joseph Carrelが首から提げて演奏できるアコーディナを作っているようです。今のところ、このスタイルで演奏している人は見ていませんが、いずれ鍵ハモのように両手でPlayする人も出てくるかもしれませんね。

ターゲットの違い

鍵盤ハーモニカはガジェット的な低価格のもから、本格的に高級な物まで幅広いです。児童教育用からプロ演奏用までをカバーしています。一方、アコーディナはプロ志向のみです。価格設定を見てもそれは明らかで、入門者向けの物は存在しません。アコーディナが普及しない理由のひとつです。

鍵盤ハーモニカは初心者向けのモデルは存在しますが、初心者だけの楽器ではありません。前述したようにプロの中には素晴らしい奏者がたくさんいます。

個人的見解

ボクがアコーディナを使う理由は、単音でリード楽器として使用したいので、コンパクトにまとまったボタン配列で広範囲の音域をカバーできる物がイイ。ショルダーキーボード的な使い方をしたいわけではなく、あくまで「Voice」の代わりとして使いたいから。

そして、前述したサチュレーションのかかった独自の音です。鍵ハモのようなクリアーな音よりも、この癖のある「ちょっと濁った音」がたまらないのです。

もっともっと個人的な意見を言わせてもらうと、この形状が好きなんです。デザインが好きなんです。楽器としてセクシーなんです。そんなところから入っているのも事実です(笑)。

My accordinas

現在、レコーディングで使っているアコーディナたちを紹介します!

Borel 前期型(serial.551)

Tokyoベイアコの原田さんより譲っていただいた、Borelの前期型のアコーディナ。かなり状態が良く、使用頻度が少なかったような印象を受けます。前期型なのでリードは真鍮製です。

最初、これを演奏したときにピッチが不安定で調律が悪いのかなと思っていました。再調整しても、あまり変わらなかったので、どうやらこれがこの楽器の癖のようなものようです。とにかく扱いにくい楽器でした。また、演奏頻度が少なかったのか、長年の間、低域リードはほぼ使われていなくて、ほとんど鳴りませんでした。

しばらく使っているうちに癖のようなものがつかめてきて、コントロールできるようになると、もうやみつきです。現在、一番使用頻度の多いアコーディナになっています。

音の傾向は、とても太い音で倍音が非常に多く「ザラ」っとした感じの音です。すごい存在感を出してくれます。特に少ない楽器編成では、その存在感が際立ちますね。

音域:D4 – A6


このアコーディナで録音しました。

Marcel Dreux (serial.616)

僕が最初に手にしたアコーディナ、Marcel Dreuxという人が作っているものです。名古屋のモンテ・アコーディオンさんで入手することが可能です。フランスで買うよりも、コチラで買う方がキッチリ調整されたものが手に入ります。そのあたりは「日本代理店」の安心感でしょうかね。

音の傾向は、スッキリした抜ける音ですが、ちょっと優等生過ぎて個性に欠けるところがあります。ただ、安定して粒のそろった音が出ますので、エレクトリック系の曲のレコーディングの際には重宝します。余計な倍音が少ないので、スッキリと混ざってくれるのです。

また、リードがステンレス製ですので、真鍮製と比べて丈夫というメリットもあります。音が「パン」っとはじける感じですので、生演奏アンサンブルでも前に音が出てくれます。音がでかくて丈夫で、安定度が抜群という頼りになるやつです。\

音域:F4 – C7


このアコーディナで録音しました。

Borel 最初期型(no serial)

かなり苦労して手に入れた、Borelの最初期のものです。フランスの楽器店を手当たり次第にネットで調べ、ようやく見つけたのがこのアコーディナです。田舎の楽器店のオーナーは英語が通じず、フランス人の元カノに間に入ってもらって交渉しました。

このアコーディナにはシリアルナンバーもなく、見た目もボコボコです。ちょっと見た目には「ゴミ?」のようにしか見えません。

シリアルナンバーがないことから、もしかしたら製品ロットに乗る前の関係者用のものかもしれません。そうだとすれば、使っていたのはプロ演奏家と思います。かなり使い込まれていて、両側のベンド用のカバーのバネも使い物になりません。しかし、楽器としての鳴りは最高の状態です。低域リードから高域リードまでスッキリとバランス良く鳴ります。

所蔵していた楽器店オーナー曰く、「最も美しい音色のアコーディナ」とのこと。

音の傾向は、甘いとろけるような音です。もう一つのBorelと比べても別物の音です。バラード調の曲のレコーディングで「ここぞ!」というときに使います。高音域の伸びる音は絹のような肌触りです。

音域:D4 – A6


このアコーディナで録音しました。



PAGE TOP