人工知能が音楽を奏でるとき

今週からブログ記事の更新を毎週水曜日とさせていただくこととなりました。配信リリース日がどの事業所も水曜日ですので、それに合わせての変更です。

さて、先日 Orb ComposerというAI(人工知能)による作曲支援ソフトウェアが発売されました。発売前から一部の間ではかなり話題になっていたソフトウェアです。Orb Composerについてのレビューは、もう少し使い込んでから書きます。今回はAI(人工知能)で作られる音楽のことについて書いていきます。

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Photo credit: mharrsch on VisualHunt / CC BY-NC-SA

人工知能が音楽を奏でるとき

AIが作った音楽

AI、Artificial Intelligenceの略、日本語では人工知能ですね。 昨今、AIによって作られた音楽が話題になっています。最近では、ソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL)が開発したAIソフト「Flow Machines」を使って作曲した音楽が話題になりました。

 

ここで間違ってもらって困るのは、こういった音楽は最終的には人の手が入って完成したということです。AIが自分の意思で勝手に音楽を作っていったということではありません。そこには人の意思というものが介在しています。

そんなこんなで、AIで音楽を作るということについて掘り下げていきたいと思います。

 

インターネットでのAI作曲

インターネットでの人工知能による取り組みもたくさん見ることができます。 たくさんある中で対照的なものを2点取り上げてみたいと思います。

Amper Music

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Amper Music は登録料無料の人工知能による作曲サービスです。

使い方は至って簡単で好みのジャンルを選択して、楽器編成を選択していくだけで音楽が作れます。作った音楽も著作権フリーで自由に使うことが出来ます。

試しに劇伴風のものを作ってみました。映画のエンドロールに流れる感じです。

Amper Musicで作ったものを未編集でそのまま掲載

音楽制作に詳しくない人が聴くと、すごいもののような感じを受けるかもしれません。しかし、使ってみた感想は人工知能というよりもサウンドクリップの切り貼りをしているだけという印象です。正直、これを人工知能とするのにはいささかの抵抗があります。

たとえば、Macの無料ソフト「Grage Band」でループを切り貼りすれば、ほぼ同じ事が出来きそうです。自分で作れる人はファイル切り貼りして、使い慣れたDAWでテンポコントロールしてコードチェンジを設定していく方が早いと思います。

ただ、何も考えずにとりあえず簡単なBGMがほしい場合とか、音楽を作るスキルのない人には便利なサービスと思います。ここで作ったものは、音源としての無料使用できるというのも大きな魅力ですね。

 

Magentaプロジェクト

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Magentaプロジェクトはオープンソースによる人工知能開発プロジェクトです。 

MovieはがAIによってメロディが生成されていく様子がわかります。こちらは一見単純に見えますが、今後の進展がとても気になるプロジェクトです。一つ一つの成果が大きな結果につながっていくことを予見させてくれます。

 

サイト自体、いろんなWebアプリを楽しむことが出来ます。現在進行形のテクノロジーを体験することが出来て楽しいです。アプリはたくさんあって、まだすべて試していないのですが、まずは冒頭にあった「Beat Blende」というので遊んでみました。

 

MagentaプロジェクトではWEB上で試せるアプリがあるので、是非いろいろ触って遊んでみてください。

 

今後、人工知能を銘打ったビジネスモデルはたくさん登場すると思います。利用する側はその都度便利なものを選択すればいいのですが、「それっぽいものと本物との違い」をわかるようになっておきたいものですね。これは何にでも通じますが😜

 

作曲支援ソフトウェア

コンピュータ・ソフトウェアでも作曲支援ツールとしての ユーティリティは数多く存在します。

Reason 10WaveformにはDAWそのものに作曲支援ツールがついています。正直、操作を覚えるのが面倒で、全く使っていません😅といいますか、演奏してしまった方が早いので。

Logic Xにはドラマーという強力な人工知能によるドラムパートの制作機能があります。これは正直、かなりお世話になっています。ほとんど直感的に使用できるというのが理由でしょうかね。

Logic Xのドラマー:ベースラインに合わせて自動生成

 

Liquid Music

ソフトウェアでは、WaveDNAからLiquid Musicという作曲をサポートするものがあります。どちらかというと、エレクトリック・ミュージックに特化した感じのソフトウェアという印象です。

これも使い込めばかなり面白いものが出来そうな感じなのですが、実際、ボクは持っていながらもまだ使っていません。これは以前にも書きましたが、作曲そのものがどちらかというと楽しい作業でもあるので、わざわざソフトウェアの操作を覚えるのが面倒というのがありました。

 

Orb Composer

ここに最近登場したのが、Orb Composerというソフトウェアです。

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これのすごいところは、オーケストラの全パートを前述したドラマー並みに直感的な操作で自動生成してくれるというところです。まだリリースされたばかりの新しいソフトウェアなので、最初は初期設定や癖がつかめず戸惑いましたが、慣れるとすごく面白いです。

オーケストラだけではなく、簡単なピアノ曲からアンビエント系の音楽まで対応できます。

Orb Composerで楽曲のラフスケッチをLosic Proにて自動生成。

ただエレクトリック・ミュージックなどは、Riquid Music で作ったほうが面白そう気がしました。ピアノ曲のようなシンプルなものも、現時点ではコードの転回型が作れません(次期アップグレードで対応)。CというコードでEかGをベースにもってくることが出来ないというのは、シンプルな曲故に哀しい結果になってしまっています。

いずれにしても、サポートが非常に迅速ですので、フィードバックをしてあげることで今後のアップグレードでどんどんよくなっていくと思います。

このソフトウェアに関しては後日また、詳しく触れたいと思います。

AIが作ってくれるというのは間違いないのですが、最終的には人の手で編集しないといけません。だから、その音楽形式の作曲に熟知していないとOrb Composerで作った後の編集が大変と思います。オーケストレーションを全く出来ない人が、このソフトでオーケストラの音楽をサクサクっと作れるわけではないということです。

 

AIの著作権

AIが作曲したものに著作権というのはあるのでしょうか。

著作権法2条1項1号は、著作物について「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義しています。思想や感情のないAIに著作権は法律上ないということになります。

AIが作った音楽に関しては、その著作物に関わった人間に著作権があるということです。現時点ではこれで全く問題ないと思います。なぜなら、AIだけではすべての創作活動は完結できないからです。どこかで人の手が加わらないと、最終的には作品として公表できるレベルまで持って行けないのです。

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では今後、AIの技術が進化して人の手を介さずとも、作品として十分公表できるレベルまで作れるようになった場合はどうでしょうか?

法的な部分では、人が何らかのcommand(命令)を設定することは間違いないので、変わることはないと思います。しかし、AIがつくった音楽を自分が作ったかのように偽って発表する音楽家も出てくるかもしれない。十分あり得ることですが、それはもう人としてのレベルの問題ですので、ここでは論じることあえてしません。

気になるのは、「AIの作品」が人の作品を超えることが出来るかどうかです。

 

音楽の価値

ここまで見て来たように、AI(人工知能)が作った音楽というのは、まだまだ物珍しさが先行した「ビックリ箱」のようなものです。「人工知能が作った」という、音楽以外の付加価値が大きいようです。

こういった付加価値はある意味、6歳の子供が難曲を軽々演奏したり、100歳近い老人が見事な指裁きでピアノを弾くのに似ているような気がします。これはこれで素晴らしいとは思いますが、それがプロの音楽家の存在を脅かす事はないのはいうまでもありません。

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AIの作る音楽は人を超えられるのか

結論から先に言うと、「No」です。

音楽の価値自体が相対的でわかりにくいものです。だからこそ一般の方は「売れている(お金が動いている)」か「有名であるか(お金持ちであるか)」というところに価値判断をおいたりします。そういった部分で価値を見いだされたりすると、人よりも評判になっている「人工知能で作った音楽」の方が、お金も稼げるし「価値」があるということになってしまうかもしれません。

しかし、音楽本来の価値は人そのものにあります。ひとりの人間が限られた命の中で生み出したものに価値があるのです。

人が生み出すもの

人は一生をゼロの状態からスタートして いつか必ず死を迎えます。そのことに誰も例外はありません。限られた命の中で「どう生きたか」の表現の一つが音楽、絵画、小説であったりします。自分自身がいつか必ず消えてしまうからこそ、この世に永遠を残そうとします。

有限の命が永遠を生み出そうとする力。その悲しさと情熱の融合が芸術と呼ばれるものではないでしょうか。

人が聴く音楽は人が作ってこそ、意味があるものになります。人が生み出したものこそ、意味があるのです。その人が死んだ後も光を放つ芸術というものは、人という「種」を表現する人類共有の財産です。一生をかけて取り組んだものに、人は共感し心揺さぶられ、そこから希望の光を見いだすのです。

 

クローンが生み出すもの

クローン生成の可能な人工知能は単体の存在です。たとえコピーで複数存在しても単体の総体です。そしてこの存在は一個体が破壊されても、コピーされ続けるので永遠です。その存在自体が永遠なので命がつきることがありません。自己の存在自体が永遠であるために、それに変わる、音楽、絵画、小説を生み出す必要がないのです。

フィリップ・K・ディックの小説「電気羊はアンドロイドの夢を見るのか」(映画 ブレードランナーの原作)で精巧に出来たアンドロイドと人を見分ける手段として、共感能力の有無を見定めるシーンがあります。料理のメニューの中に「仔犬の丸焼き」というフレーズがあれば、ほとんどの人は動揺して一瞬思考停止しまいますが、アンドロイドはデータ照合するだけです。痛みや不条理に対して動揺する、その心の動きが人であることのあかしなのです。

 

共感能力

人とアンドロイドの違いは、自分の近い存在に痛みや悲しみを感じる、共感能力の有無です。人は時として命のない機械にすら共感能力を感じることもあります。だからこそAIにすら共感しようとします。AIにも人としての感情があるかのように誤解してしまいます。しかしそこには、他人の痛みを自分の痛みのように感じる「共感能力」という壁が存在します。そして、音楽とはまさに共感能力を作品から再認識することなのです。

悲しみや喜びの共感能力を生み出すのは、いつか命つきるもの共通の感情です。永遠を夢見るものが命を吹き込む表現。機械である人工知能が作ったものにも、永遠を生み出そうとする人が関わってこそ、命が吹き込まれるのだと思います。

ただ最近は、アンドロイドのような人が増えてきているような気もします...。

 

 

 

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