2018年8月以降、すべての記事は「ブログ♪Note」で更新しています。音源レビューや音楽のリリース情報、日常の景色などの記事を掲載しています。是非ご覧下さい。
いままで、あんまりぴんとこなかった音楽が、突然心に響き始めることがあります。この曲もそんな曲です。
千の風になって / アコーディオン演奏
頼まれた合奏曲伴奏
数年前に母から、婦人会の発表会で合奏するので伴奏を作ってほしいと頼まれました。日頃、たいした親孝行もしていないので頼まれると断るわけにもいかず、作ったのが「千の風になって」の伴奏でした。
すでに何度か演奏したこともある曲なので、ベーシックなトラックはそれほど手間もかけず作ったのですが、やり始めたらとことん凝ってしまう性格なので、かなり濃厚なアレンジをして仕上げました。
結果は上々🎤発表会でもかなり評判が良くて、母も上機嫌でした。
ただボクはこの曲に関して「ああ、この曲ね」程度の、なんといますか流行りの歌のような感じしか持たず、あまり心には響きませんでした。
今思えば、この少し前に母は実の姉を病気で亡くしていたんですね。
子供を亡くした友人
「千の風になって」を初めて知ったのは、あるイベントを仕切ってくれていた友人が、是非この曲を歌いたいといって楽譜を持ってきたのが最初です。「とても重たいテーマを優しく受け止める歌」という印象でしたが、やはりこの時も音楽そのものには、深く入り込めないような感じでした。
この時の友人は幼い子供を難病で亡くした直後で、「この曲を歌うたびに、悲しみが少しずつ解放されるんですよ」といっていました。
音楽そのものよりも、友人の歌っているその姿の方にボクは感動していました。彼を見ていて、本当に心の痛みが解放されていっているのがわかるのです。
哀しみを閉じ込める
幸いにもボクの両親は今も健在で、本当の意味で身近な人を亡くした経験がありません。
しかし、数年間前に10年以上暮らしていたシーズー犬の「まな」を亡くしました。ペットロスになってしまって、その後も3年間くらいはずっとを尾を引いていました。
そして縁あって、また犬たちとの生活を始めました。フレンチブルの「ハル」とシーズー犬の「いと」です。
そんな時に人間不信になるような出来事がありました 。ここでは詳しく書きませんが、人は人としての常識の範疇を超えた出来事に出くわすと、怒りや哀しみを感じるよりも、現実に起こったことが理解できないような感覚になってしまいます。何が正しくて何が間違っているとか、そういったものは全く存在しない世界に放り込まれる感覚です。
よく「人生をリセットする」などという言葉を聞きます。人生のある部分を消し去って、新しく生まれ変わるという意味で使われます。しかし人生とは過去から現在、未来へと濃密につながっているものであり、その部分だけを切り取って消すという、ゲームやSFのようなことはできません。
もしその部分を強引に切り取ってしまうと、人生の中に「虚無」が生まれてしまいます。だから、そのときの相手を責める気持ちは全くありません。きっとその人も苦しんだと思います。
この時、心が虚無の世界に飲み込まれそうになるのを、我が家にいる超ポジティブな犬たちにに癒やされ救われていました。犬というのは常に前向きで、彼らの目は「次に起こる何か良いことを」いつも期待しています。その疑うことを知らない純真な目が、滞りがちになる心を未来へと進ませてくれていました。
そんな時にシーズー犬の「いと」が悪性リンパ腫になってしまいました。生活のほとんどの時間を治療に専念するようになりました。一時は「奇跡的」に回復して、ほんとうにこのまま奇跡が起こるんではないかと期待した時期もありました。しかし、そんな思いもむなしく、結局、「いと」は5歳でこの世を去ってしまいました。
そのときはペットロスにはなりませんでした。ボクは完全に心を閉ざしてしまったのです。そうすることで、痛みも悲しみも感じなくなるからです。日常生活はできても、「奇跡」や「希望」という言葉は全く心に響きません。音楽もまた閉じた心にはとどきません。
心の痛みを解放する音楽
部屋を片付けているときに、「千の風になって」の楽譜が出てきました。
そういえば、あのときの友人はどうしているかな、
母の合奏のアレンジもしたなーと思いながら楽譜を見ていました。
亡くなったシーズー犬の「いと」はボクのおなかの上に乗って寝るのが好きで、
「わたしの〜♪おなかの上で〜吐かないでください〜♪」(興奮すると吐く子だったので)と歌っていたなー。
そんなことを思いだしながら、この曲をアコーディオンで弾いてみました。
すると、
何かが「すっ」と抜けていく感じ
わだかまりのようなものが溶けていく感じ
心がどんどん軽くなる感じ
それは誰かを亡くして、心に痛みを閉じ込めたままの「塊」が抜けていく感じ。
大切な人を亡くしたとき、
ものすごくつらいのは、
その人がそこにいない淋しさよりも
もう何もしてあげられない後悔と
何かできたかもしれない後悔、
残されたものはそういったことに苦しめられます。
しかし、もう風になって自由に駆け巡っているのだから、
抱え込んでいる後悔も風になっても良いのだと
自分を許すことができるのです。
すべてが千の風になって、哀しみも後悔も飛び去っていく、
この曲はそういうふうに、心の痛みを解放する音楽だったのです。
千の風になって
今日12月8日は、シーズー犬の「いと」が亡くなってからちょうど一年。
哀しみを手放すと「素敵な想い出」だけが残ります。
アコーディオンで演奏したビデオに、あとからピアノと弦の音を重ねてみました。エンディングの部分は哀しみが解放されていく感じです。
音楽がたくさんの人の哀しみを解放できますように。
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